特定社会保険労務士とは、司法制度改革の流れで導入された労働トラブルのADR代理権を持つ社会保険労務士(社労士)のことです。
昨年「社会保険労務士法」が改正され、平成19年4月1日から「特定社会保険労務士制度」が始まる予定です。
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特定社会保険労務士が必要となった理由は、個別労働紛争の増大にあります。
残業代の不払い、給与の不支給、年次有給休暇の未取得等、労働関係トラブル(個別労働紛争)が増え続けていますが、それらを解決するために労働法令の専門家である社会保険労務士に対する新たな役割が求められているのです。
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特定社会保険労務士となるには、通常の「社会保険労務士試験」に合格し、その上で社会保険労務士会の特別研修を受講し、紛争解決手続代理業務試験にパスしなければいけません。
試験に不合格、もしくは試験を受けない人には、当然「特定社会保険労務士」の資格は与えられません。
第一回の特定社会保険労務士試験の合格率は、76%でした。
下記に連合会が配布した、第一回の特定社会保険労務士試験(紛争解決手続代理業務試験)と特別研修の実施要項を記載しておきます。
平成18年4月
特別研修と紛争解決手続代理業務試験の概要について
第1回特別研修の実施が、いよいよ目前に迫って参りましたので、特別研修と紛争解決手続代理業務試験の概要について、以下のとおりご案内申し上げます。
1 特別研修
(1)講義(30時間)
以下の科目をビデオにより行います。カッコ内は講師です。
(2)グループ研修(18時間)
目的は、次の過程のゼミナールの予習です。同時に、特定社会保険労務士をみんなで目指そうとの気運を盛り上げる効果も期待しています。
グループ研修で行うことは、次のとおりです。
労働紛争の7つの事例を示します。そのうちの一つは、依頼者の具体的な相談内容を示し、依頼者の主張を申請書、あるいは申立書という形にまとめることを行います。もう一つは、相手方の申請書が示され、これに反論する依頼者の主張を答弁書、あるいは陳述書という形でまとめることです
いずれも依頼者の主張を的確に文章に表現するということを目指すものです。これらは、法曹の養成課程で行われる「起案」といわれるものです。残りの5つの事例については、いくつかの問題点(小問)を指摘し、この問題点を中心に議論するという方法で研修を行います。
いずれもここで結論を出すことはしません。申請書等は、グループでまとめて次の過程のゼミナールに提出します。また、その他の事例については、グル-プ研修における議論を踏まえてゼミナールにおける講師の講義を聞くことにより、一層の理解を深めることが期待されています。
(3)ゼミナール(15時間)
ここでは、50人程度のクラスを作り、講師と対話しながら講義を進める方法で行います。講師は、労働事件に詳しい弁護士です。(各地の講師は、5月20日に東京に集合し、このゼミナールの教え方の研修を行い、全国同じレベルの研修内容になるようにします。)
教材は、グループ研修で使用したものと同じです。申請書等について、受講者の弱点等を指摘しながら望ましいものはなにかを指導します。ここで、ポイントとなるのは、「要件事実」という概念です。即ち、法律上意味のある事実はなにか、意味のないものはなにかを判断し、意味のあるものを記述することです。また、事例ごとの問題点(小問)を解説することも行われます。
それに加えて、「権限と倫理」について、事例を挙げながら講義が行われます。守秘義務、利益相反(社会保険労務士法第22条等)、社会保険労務士の業務の範囲等が主たるテーマとなります。
2 試験
試験については、試験委員が定めることになりますが、能力担保措置検討会(以下「検討会」という。)の報告書でその概要が示されています。試験は、ゼミナールの最終日の午後行われる予定です。時間は、2時間の予定です。
試験の内容は、個別労働紛争の具体的事例について、専門的解決能力及び実践的知識を問うもので、いくつかの設問を設け、解答を簡潔に記述する方法で行われます。この設問には、必ず「権限と倫理」に関するものが含まれます。
試験は、日頃、企業の人事労務管理について相談を受け、指導している社会保険労務士であれば、特別研修を真摯に受講し、理解し得たものは、原則的に合格する水準のものであり、社会保険労務士を選別したり、少数の社会保険労務士に業務を制限したりするものでないことを理解してください。
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